グループで複数台の自動車で出かけるときなど、運転中に LINE のような文字チャットが使えないシーンでの連絡手段を考える。候補としては、以下が考えられる。
方法 | 資格 | 通信距離目安 |
特定小電力無線 | 不要 | 数百メートル |
デジタル簡易無線 (登録局) | 要登録 | 数百〜数キロメートル |
アマチュア無線 | 必要 | 数十キロメートル |
IP 無線 | 不要 | スマホの電波の圏内 |
今回はこのうちの IP 無線を、スマートフォンを使用して構築してみる。
前提
一口に IP 無線と言っても統一された規格があるわけではなく、無線機メーカーなどにより様々な機種やサービスが提供されているが、今回は前提として次の条件を考える。
- 汎用性: 市販のスマートフォンで使えること
- 秘匿性: 部外者に会話の内容を傍受されないこと
- 運用コスト: 端末ごとに有料のサブスクリプション契約などが不要なこと
これを満たす手段として、オープンソースの VoIP システム「Mumble」を使用して IP 無線システムを構築することとする。
用意するもの
スマートフォン
SIM が挿さった適当な iPhone か Android スマートフォンを用意する。iPhone の方のアプリではマイクの入力レベルを調整できなさそうなので、選べるなら Android の方が良さそうである。
PTT スピーカーマイク
スマホ本体に触れずにマイクを有効化できる、PTT (Push to Talk) スイッチ付きの無線機用スピーカーマイクを使用する。PTT スイッチを押下したときだけマイクが電気的に接続されるものを選ぶこと。
Type-C オーディオ変換アダプタ
スマホに外部のスピーカーマイクを接続するために使用する。同時に充電できるものが良い。
4極 TRRS マイク・イヤホン分岐アダプタ
スピーカーマイクを4極に変換するのに使用する。
2.5mm -> 3.5mm ステレオ端子変換アダプタ
スピーカーマイクのマイク端子を 2.5mm から 3.5mm に変換するのに使用する。
設定・構築
Mumble サーバ
VPS など、グローバル IP アドレスがついた適当なサーバにインストールする。
詳細は別の記事で書くとして、一番のポイントである秘匿性をもたせるために、第三者が勝手に接続できないように接続パスワードを設定する。
# diff -u /etc/mumble/mumble-server.ini.orig /etc/mumble/mumble-server.ini
--- /etc/mumble/mumble-server.ini.orig 2025-05-07 08:41:45.509184937 +0000
+++ /etc/mumble/mumble-server.ini 2025-05-15 00:27:44.793974066 +0000
@@ -115,7 +115,7 @@
;host=
; Password to join server.
-serverpassword=
+serverpassword=<YOUR_PASSWORD>
; Maximum bandwidth (in bits per second) clients are allowed
; to send speech at.
スマホ
基本的に上記の部材を介して接続するだけで、PTT マイクをスマホで使用できるはずである。

あとは Mumble のアプリ (Android では Mumla) で、Mumble サーバの接続情報を設定する。
送信モードは「Voice Activated」(音声を検知したときに送信) に設定することで、スピーカーマイクで PTT スイッチを On にしたときだけマイクが有効されて、音声が送信される。
なお当然ながら IP 無線は電波が圏外のエリアでは使用できないので、山奥などに行くときにはデジタル簡易無線などを併用すると良い。
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